アクリジョンと水性ホビーカラーはココが違う!臭い/ABSの侵食/下地塗料の有無
水性塗料といえばGSIクレオス社の「水性ホビーカラー」が有名です。
シタデルカラーやファレフォといった塗料もメジャーですが、水性塗料と聞いてまず思い浮かぶのはこの塗料でしょう。1982年誕生の歴史ある塗料で、2019年には大幅リニューアルしています。
そんな「水性ホビーカラー」と、同社後発の水性塗料「アクリジョン」にはどんな違いがあるのでしょう。
- どっちも水性塗料だけど何が違うの?
- 筆塗り始めたいけどどっちを買えば良い?
- 初心者にオススメなのはどっち?
- 見た目が似ていて違いがわからない
塗装経験がない方・初心者の方には、違いが分かりにくいかもしれません。
筆者も塗装を始めたばかりの頃は「どっちも水性塗料でしょ?何が違うの?」と思っていました。
そこで今回は、両者の臭いや発色、乾燥時間等を比較し、その違いについて徹底解説したいと思います。
解説の前にざっくりした違いを見てみましょう。
ざっくり特徴
同じところ
・ 水で洗える・希釈できる(筆塗りなら)
・ 色味
大きく違うところ
・ 水性ホビーカラーは有機溶剤系塗料
アクリジョンはエマルジョン塗料
(水がベース)
・ 水性ホビーカラーは下地を溶かす
アクリジョンは溶かさない
両者は成分に明確な違いがあるようです。
そして、詳細を語る前ではありますが、筆者が筆塗りにオススメするのはアクリジョンです。
本記事では、実際に塗って性能を比較したうえで、アクリジョンをオススメする理由を解説するので、どちらを使うか迷っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
※両者ともに優れた塗料であり、水性ホビーカラーを下げる記事では決してありませんので、あしからず。
ビンの見た目が似ていると聞きますが、商品名をよく見て選びましょう。
アクリジョンの詳細について知りたい方は、次の記事をどうぞ!
1.アクリジョンと水性ホビーカラーの比較
1-1.比較表
主な特徴をまとめました。詳細は後述します。
特徴 | アクリジョン | 水性ホビーカラー |
---|---|---|
種類 | 水系エマルジョン | 水溶性アクリル樹脂 |
臭い | 弱い | やや弱い |
発色 | やや弱い | 普通 |
乾燥 | やや早い | 普通 |
ABSの浸食 | 侵食しない | 侵食する |
専用下地の有無 | ある | ない |
使用感 | サラサラ | ややベタベタ |
良ければ、以下GSIクレオスの公式情報もご覧ください。
1-2.臭い
塗料でもっとも気になるのが「臭い」です。
臭いがあるものは、健康面や周囲への配慮が必要になるからです。
臭いの面で優れているのは「アクリジョン」です。
アクリジョン
アクリジョンの臭いは非常に弱く、塗装していても感じることはほぼありません。筆者の感覚では、換気をせずとも気にならないレベルです。
塗料のビンに鼻を近づけると、さすがに臭いを感じます。
※気分が悪くなるので長く嗅がないでください。
水性ホビーカラー
水性ホビーカラーも臭いは弱いですが、若干シンナーのような臭いがします。塗装中も臭いを感じますし、ビンに鼻を近づけると強い刺激臭がします。
そのため換気は必須となります。
1-3.発色
色味は両者ともに違いはありませんが、発色が良いのは「水性ホビーカラー」です。
白と黒のプラスチックスプーンを使って「カラーテスト」をしたので見てみましょう。
白スプーン
ご覧の通り色味は同じです。発色は、有機溶剤系塗料の水性ホビーカラーが若干良く、必要な重ね塗りの回数は次の通りでした。
<塗り重ね回数>
・アクリジョン :5回
・水性ホビーカラー:4回
黒スプーン
黒スプーンの場合、水性ホビーカラーは発色しましたが、アクリジョンは下地の黒が透けてほぼ発色しませんでした。
どちらの塗料も5回塗り重ねた状態です。
アクリジョンは暗色の下地だと発色が良くありません。
※アクリジョンの発色は、筆者がアクリジョンで塗装した作例も参考にしてください。
1-4.乾燥時間
筆塗りはムラを防ぐため1度で塗らず、塗り重ねることで発色させます。前の色が乾燥してから次の塗料を重ねるため、乾燥時間が短いほど作業効率が上がります。
希釈せずに薄く塗ったアクリジョンは、15分程度で乾燥しました。
水性ホビーカラーも同程度でしたが、若干、アクリジョンが早く乾く印象でした。
乾燥時間に決定的な差はなく、薄く塗った場合はどちらも20~30分もあれば乾燥すると言えます。
1-5.ABSの浸食有無
ABSとは
ABSとはプラスチックの一種で、硬く衝撃に強い素材です。
丈夫な反面、塗料の有機成分が浸透すると脆(もろ)くなり割れることがあります。
古いキットの関節やフレームなどで使われるので、塗装には注意が必要です。
アクリジョン
アクリジョンは、水性ホビーカラーと比較して有機溶剤の使用量が約80%カットされており、ABS製パーツを侵食しにくくなっています。直接ABSに塗ってもパーツが脆くなることはありません。
出典:GSIクレオス “水性模型用塗料「水性カラー アクリジョン」を発売”
低溶剤のアクリジョンは、パーツの材質を気にせず塗装することができるのです。
4年間アクリジョンを使っている筆者も、ABS製パーツが割れたことはありません。
水性ホビーカラー
水性ホビーカラーは有機溶剤を含むため、ABS製のパーツを侵食し割れやすくします。
公式サイトでもABS製パーツへの塗装は推奨していません。塗装が必要な場合は、サーフェイサーなどで下地塗装をしたうえで塗装することになります。
1-6.専用下地の有無
水性塗料は「隠ぺい力」が弱いため、キレイに発色させるには下地の色が重要になります。
※隠ぺい力 … 素地の色を覆い隠す能力のこと
アクリジョン
アクリジョンには「ベースカラー」という専用の下地塗料がラインナップされています。
下地として塗ることでアクリジョンの発色を大幅に向上させる塗料で、同系のベースカラーを下地として塗れば、隠ぺい力の弱い「赤」や「黄」もキレイに発色させられます。
アクリジョンを使う上でベースカラーの使い方は「肝」と言えます。詳細は以下記事をご覧ください。
水性ホビーカラー
水性ホビーカラーに専用の下地塗料はありません。
下地塗装をする場合は「サーフェイサー」や、隠ぺい力が高い「暗色の水性ホビーカラー」を使うことになります。
1-7.使用感(希釈なし)
どちらの塗料も、筆で塗る場合は基本的に希釈する必要はない※とされています。つまり、ビンから出したそのままの状態で塗ればよいのです。
※GSIクレオスの塗料公式ページより
希釈をせずに筆塗りした際の感触は次の通りです。
アクリジョン
比較的サラッとしており、希釈をせずとも塗料の伸びは良好でした。筆がモタつくこともなく、塗料がダマになることもありません。
逆に希釈しすぎると、顔料が流れてムラになるので注意が必要です。水分量が多いとパーツに弾かれることもあります。
水性ホビーカラー
若干ドロッとしており、希釈せずに塗ると筆がモタつく感覚がありました。伸びは良くない印象です。
専用薄め液で少し薄めて筆塗りするのが良いでしょう。
2.アクリジョンをオススメする理由
冒頭で述べた通り、筆塗りを始める方にはアクリジョンをオススメします。
- 臭いがない
- 片付けがカンタン
- 下地塗料がある(発色を助けてくれる)
- 公式もオススメ ※GSIクレオス ホビー部「X」
2-1.臭いがない
塗装する上でまず考えなければならないのが「臭いの問題」です。
同居する家族や周囲の迷惑にならないよう非常に気を遣うことになります。また、換気も必須なので寒い時期の塗装は悩みどころです。
溶剤の使用料が非常に少ないアクリジョンは、臭いがほとんどないのでリビングでも塗装できますし、換気も必要ありません。
2-2.片付けがカンタン
塗装は手間のかかる作業です。苦労して塗り終えた後の片付けが大変だと「もう塗装したくない」と思ってしまいますよね。
その点、アクリジョンは水だけで片付けられるので非常にらくちんです。
使い終わった筆はコップ入れた水で洗えば済みますし、塗料が手についても水と石鹸でキレイになります。
※しっかり筆のお手入れする場合は「Mr.フデピカリキッド」での洗浄がオススメです。
2-3.下地塗料がある
アクリジョンの弱点は「隠ぺい力の弱さ」です。
赤や黄のような隠ぺい力が弱い色は、そのままパーツに塗っても思った色になりません。
そんな問題も下地塗料の「ベースカラー」で解決でき、隠ぺい力が弱いアクリジョンにとってなくてはならないものと言えます。
筆者がアクリジョンを使っているのは、下地塗料があるからです。
まとめ
以上、水性ホビーカラーとアクリジョンの違いを解説しました。
ここまでアクリジョンを推してきましたが、うまく塗装できるようになるには慣れが必要です。
ぜひ記事の内容をを参考に、アクリジョンで筆塗りを楽しんでみてくださいね!
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、ステキな筆塗りライフを!
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※アクリジョンで筆塗りを始めるなら、こちらの記事もどうぞ!
▼アクリジョンで筆塗り全塗装した筆者の愚作たちです。
アクリジョンを使った塗装の参考になればうれしいです!
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